サムレスグリップで筋トレするメリットとデメリット|○○では危険すぎる!?

サムレスグリップを筋トレの中で利用していくなら、そのメリットとデメリットを確認して、筋トレで安全に有効活用していきましょう。

筋トレを初めて少しずつ知識がついてくると、グリップ方法に関しても複数のバリエーションがあることに気づいてきます。その中でも、通常おこなっているグリップの次に有名であるといえそうなグリップが、サムレスグリップ。

通常のグリップにはないメリットがあるとされ、筋トレ種目によってはこのグリップをおすすめされることもあります。

しかし、メリットとは逆に、実はしっかりと理解しておきたいデメリットもあります

そこで今回は、サムレスグリップの基本的な紹介とこのグリップ方法がもつメリットとデメリット、さらには利用をおすすめできる筋トレ種目とおすすめできない筋トレ種目も紹介していきます。サムレスグリップを筋トレで利用する前に、しっかりと確認しておきましょう。

サムレスグリップとは?

サムレスグリップとは、バーベルやダンベルを握る際に使われるグリップ方法のひとつです。

通常、バーベルやダンベルを握る時は、まずは4本の指でバーを握り、そこにさらに親指でバーを包むようにすることで、合計5本の指で握る(サムアラウンドグリップ)ことになります。

それに対してサムレスグリップというのは、その名前(thumb「親指」less「無い」)が示すとおり、親指を利用しないグリップ。

つまり、親指を除いた4本の指でバーやダンベルを支える握り方。親指はバーを包むような形にはならず、人差し指の横に自然に添えておくだけとなります。

人によっては、特定のトレーニングにおいて、通常のグリップよりサムレスグリップを好んで利用することがあります。

ただ、サムレスグリップにはメリットはあるものの、考えるべき重大なデメリットもあるので、利用する前にそのメリットとデメリットを絶対に確認しておいた方がいい握り方になります。

サムレスグリップで筋トレするメリット

特定の筋トレにおいてバーの位置が理想的とされる

例えば、ベンチプレスをする時にサムレスグリップを利用すると、バーが手のひらのちょうどいいポジションに収まりやすいというものです。

バーを親指で包み込んで握らないことで親指の付け根の骨に負荷が集まります。さらに自然と上から前腕骨に真っ直ぐに重量がかかり、特に重い負荷のベンチプレスをおこなう際に痛みが少ないというのがその理由。

ただし、この点については注意が必要。

サムレスグリップは、一瞬のためらいや不注意でバーベルが手から滑りおち、自分の胸や顔の上に落ちてしまう危険性があります

ベンチプレスをおこなう際には、通常のグリップであっても手首を返さないようにして、前腕骨に重量をかけておこなうことは可能。親指の付け根の骨に重量を分散することはできませんが、痛みを抑えることはできます。

よっぽどの上級者でない限り、ベンチプレスでのサムレスグリップは控えるようにしましょう。(※この部分についてはとても大切なので、後半でより詳しく解説していきます)

主なターゲット筋肉をより鍛えやすくする

サムレスグリップは特定の筋トレ種目においては、主なターゲットとする筋肉をより活性化させて関与を大きくすることで、より大きな刺激を入れることができるとされます。

例えば、順手の懸垂やラットプルダウンのような筋トレ。

これらの筋トレは引く動作を鍛えるため、背中の広背筋を主なターゲットとしていきながら、腕の上腕二頭筋も少なからず関与していくことになります。

ここで、通常のグリップでバーを握る場合、より握力を強く発揮して握っていくことが可能。そうすると上腕二頭筋が使いやすくなるため、その分関与は強くなります。

しかし逆をいえば、主なターゲットである背中の筋肉の関与は少なからず弱くなるということです。

そこで、これらプル系の筋トレをおこなう時は、あえてサムレスグリップを利用することで、上腕二頭筋の関与を弱くし、本来集中して刺激していきたい背筋に入る刺激をより大きくしていくといったメリットがあるのです。

サムレスグリップで筋トレするデメリット

大きな事故・ケガのリスク

サムレスグリップは、ベンチプレスのように自分の体の上にバーベルを挙上する筋トレだと、手からバーが滑り落ちて、大きな事故につながるリスクと常に隣り合わせな状況になります。(100kgのバーベルが落ちてきたらと想像してみましょう。)

他にもダンベルショルダープレスなどの場合、挙上した時には体の横側上にダンベルが来るため、自分の体の上にダンベルが落ちてくる可能性は低く、万が一落としたとしてもベンチプレスほどは危険じゃないかもしれません。

それでも、足へダンベルを落とすリスクや床を破壊してしまうなんていう事故は常に起こり得る可能性があります

筋トレで上級レベルの熱狂的なパワーリフターやボディービルダーは、サムレスグリップ(スーサイドグリップ)を利用したトレーニングをする時、死ぬ気でおこないます。

サムレスグリップを利用する時はそのぐらいの覚悟がもちながら、気をつけておこなうようにしましょう。

握力を制限することで全体的なパフォーマンスは下がる

サムレスグリップは握力を十分に発揮できないように制限したグリップ。

だからこそプル系の筋トレなどで利用すると、主なターゲットとする筋肉への刺激を増やしていくことが可能といわれています。

しかしそれはつまり、プル系の筋トレにおいては握力を発揮できない分、全体として挙上できる重量はどうしても軽くなってしまうということです。

しかし、実は握力を発揮すると、脳が活性化するといった研究報告もあります。

そこから仮説として考えられるのが、握力を出せば可能かもしれない脳の活性化をサムレスグリップで抑えてしまうことで、プレス系であっても全体的なパフォーマンスは下がってしまうのではないかという点です。

これについては、プレス系の筋トレに的を絞ってサムレスグリップとサムアラウンドグリップの比較をした研究がないので、確実なことはいえませんが、サムアラウンドグリップで握った方が、プレスする際にも力をより出しやすい感覚になるのは確かです。

サムレスグリップで試してみたい筋トレと避けるべき筋トレ

サムレスグリップで試してみたい筋トレ

サムレスグリップの利用をおすすめできる筋トレというのは、みてきたように基本的にはプル系の筋トレがベスト

ラットプルダウン、順手の懸垂は既に触れたとおりで、他にもシーテッドローやベントオーバーローイングなどにもおすすめです。

普段、サムアラウンドグリップでこれらの筋トレをおこなっているなら、たまにサムレスグリップに変えておこなってみましょう。

今まで以上に背中の筋肉に効いている感覚を掴めると思います。筋肉へ新しい刺激を入れるという点でもおすすめです。

サムレスグリップを避けるべき筋トレ

プレス系の筋トレ(特にベンチプレス)

人によってはベンチプレスをおこなう際にサムレスグリップをすすめることもありますが、それはあくまでも上級者の人でリスクを覚悟している場合のみ。

例えトレーニングパートナー(スポッター)が補助でついていた場合でも、高重量のバーベルが手から滑ってしまった場合、瞬時にスポッターが反応することはハッキリいってとても難しいです。

そのため、基本的にサムレスグリップでベンチプレスをおこなうということは、いつ起こるか分からない事故を刻一刻と待っているようなものと考えておくべきなのです。

しかし、それでもサムレスグリップでベンチプレスをするというのであれば、次のことを守っておこなっていきましょう。

  • パワーラックやスミスマシンなどのようにセーフティーバーがある環境でおこなう
  • セーフティーバーを利用する時も、バーの高さを胸より高い位置に必ずセットする
  • まずは通常のグリップで試し、サムレスグリップでおこなえそうか確認する

サムレスグリップでバーベルの挙上を始めると、挙上中に通常のグリップへ戻すことは非常に難しくなります。

命を守るためにも、ベンチプレスをおこなう際には通常のグリップを利用することを強くおすすめします。

デッドリフト

デッドリフトはプル系の種目に含まれるので、サムレスグリップでも問題なさそうに思えるかもしれません。

確かに、軽めの負荷でウォームアップ程度のデッドリフトをおこなうのであれば、サムレスグリップでもいいかもしれませんが、ほとんどの人は、サムレスグリップを利用した場合、最大筋力を使ってようやくバーベルを上げられるような負荷でデッドリフトをおこなうのはほぼ不可能です。

バーベルが重くてサムレスグリップでは耐えられません。

通常のデッドリフトやその他のデッドリフトのバリエーションのように、背中や腕の力だけではなく、下半身の力も相当関わってようやく挙上できるプル系の筋トレでは、サムレスグリップの利用は難しいといえます。

サムレスグリップで筋トレするメリットとデメリット|○○では危険すぎる!?のまとめ

サムレスグリップについてメリットとデメリット、さらにサムレスグリップの利用におすすめな筋トレとおすすめでない筋トレを紹介してきました。

サムレスグリップは確かにメリットはあるものの、そのデメリットはあまりにも大きい握り方です。

必ず安全にできる状態や環境を用意してから、おこなっていくようにしましょう。