インクラインベンチプレスとフラットベンチプレスの違いを比較

インクラインベンチプレスとフラットベンチプレスの違いを比較していきます。大胸筋を中心に鍛えていく両種目の違いを理解して、目的にあった付き合い方をしていきましょう。

大切な胸筋を鍛えるために効果的なトレーニングで、一般的なものいえばベンチプレスですよね?

そのベンチプレスの中でも、インクラインベンチプレスとフラットベンチプレスは、他のベンチプレスのバリエーションと比べて、比較的人気の高い筋トレ種目だと思いますが、それぞれの違いやメリット、デメリットがわからないという人はとても多いです。

今回はそんな人のために、インクラインベンチプレスとフラットベンチプレスの違いを比較し、メリットとデメリットを紹介していきます。それぞれの特徴を知って最強の大胸筋を手に入れましょう!

インクラインベンチプレスとフラットベンチプレスの基本の違いを比較

インクラインベンチプレス

インクラインベンチプレスは、傾斜のついたトレーニングベンチ(インクラインベンチ)を利用して、頭が上方へ来るように斜めに座り、行っていくベンチプレス。

頭を上にして体を斜めにすることで、バーベルを挙上していく時に、肩から腕を水平面で前方へ振る肩関節の水平内転の動作を、体に対しては斜め上へ行っていくようになるのが特徴。

これにより、大胸筋の上部繊維の関与が強まるため、大胸筋上部の強化に効果があります。

また、動作の中では他にも、三角筋(前部)や上腕三頭筋などにも刺激が加わることになります。

インクラインベンチプレスのやり方

インクラインベンチプレスを行う際のやり方や注意点などは次のようなもの。

  1. インクラインベンチの傾斜を30〜45度に調整して座ります
  2. 膝を曲げ、足の裏を床にしっかりつけます
  3. 両手の幅を肩幅より広めにとり、バーベルを握ります
  4. 肩甲骨を寄せておきましょう
  5. バーベルをラックから外し、胸を張って肩甲骨を寄せながら肘を曲げてバーベルを下ろします
  6. 下ろす位置は大胸筋の中部から上部または鎖骨あたりが目安
  7. 肩甲骨を寄せたまま、バーベルを垂直方向に上げていきましょう
  8. 垂直方向に上げても体が斜めになっているため、体にとっては斜め上へ上げることになります

三角筋前部の関与を極力抑えたい場合は、15~30度程度の間で試し、筋肉への刺激の入り具合を確認してみましょう

フラットベンチプレス

フラットベンチプレスは、その名のとおり「フラット」、つまり床に対して平行なトレーニングベンチに仰向けになって行う一般的なベンチプレス。

フラットベンチプレスでは、水平内転動作が体に対して上方へ偏ることがないため、大胸筋の効き方も、全体的に分け隔てないのが特徴

このフラットベンチプレスでも、他に三角筋(前部)と上腕三頭筋も関与してくることになります。

フラットベンチプレスのやり方

  1. トレーニングベンチに仰向けに寝て、頭をベンチにつけて安定させます
  2. 膝を曲げ、足の裏を床にしっかりつけます
  3. 両手の幅は肩幅より広めにとり、バーベルを握ります
  4. 肩甲骨を寄せておきましょう
  5. バーベルをラックから外し、バーベルを深く下ろします
  6. 下ろす位置は乳首かそれよりやや下が目安
  7. 胸を張って肩甲骨を寄せたままバーベルを持ち上げていきます
  8. 腕を伸ばしてトップポジションで安定させます
  9. バーベルが肩と鎖骨の直線上にくるようにしましょう
  10. 体は床に対して垂直なため、垂直に近い形でバーベルが上がっていきます

インクラインベンチプレスとフラットベンチプレスのメリットとデメリットを比較

見てきたように、インクラインベンチプレスとフラットベンチプレスは、その体の角度の違いにより、微妙にバーベルを下ろした場合の位置や、同じ水平内転の動作であっても、バーベルの軌道が変わってくることが分かります。

また、共通項として、基本的に大胸筋・三角筋(前部)・上腕三頭筋の3つの筋肉を主に鍛えていくという点もあります。

このような点を踏まえ、インクラインベンチプレスとフラットベンチプレスがもつメリットとデメリットについての違いを比較してみましょう。

インクラインベンチプレスのメリットとデメリット

メリット①:何といっても鍛えにくい大胸筋上部を鍛えるために重宝

大胸筋は、上部(鎖骨部)、中部(胸肋部)、下部の3つの部位で構成されています。

インクラインベンチプレスの最大のメリットは、主に大胸筋上部をターゲットに鍛えることができるという点。

大胸筋の上部繊維は、大胸筋の中でも比較的鍛えにくいとされ、大きな負荷を利用できるインクラインベンチプレスは、大胸筋上部を鍛えるうえでは唯一無二的な存在。

特に、大胸筋上部はボリュームのある大胸筋を手に入れるための鍵となる部分でもあるため、多くの人が行っているトレーニングです。

メリット②:肩の筋肉により強い刺激を入れたいなら有効に利用すべし

また、トレーニングベンチに傾斜をつけて、体を斜めにした状態でウエイトを挙上していくため、フラットベンチプレスの要素は残しつつ、肩の強化に利用されるショルダープレスに近い種目になります。

結果として、大胸筋と一緒により肩の三角筋の前部繊維を強化していけるので、インクラインベンチプレスの利用価値は高くなるといえます。

特に、トレーニングベンチの角度を調整するだけで、大胸筋により効かせるのか、三角筋により効かせるのかを好きなようにコントロールしていけるのは嬉しいポイントですね。

メリット③:ローテーターカフ(回旋筋腱板)の負担軽減

ローテーターカフは、不安定な肩関節を支えている細かい4つの筋肉とその筋肉から伸びる腱の総称をいいます。

肩の安定感を増すためにも大切であると同時に、突然激しい負荷がかかったり、継続的に負荷がかかり続けると、もろい部位であるため怪我をしてしまいやすくなります。

実は、インクラインベンチプレスではベンチが傾斜していることで、このローテーターカフ(回旋筋腱板)にかかる負担が軽減された状態でトレーニングしやすいというメリットがあります。

デメリット①:大胸筋を満遍なく鍛えるのには向かない

逆に、インクラインベンチプレスのメリットがデメリットになってしまう理由のひとつとして、上部繊維の関与が大きくなるため、大胸筋を全体的に鍛えて、ボリュームのある大胸筋のベースとなる筋肉量を手に入れるのが難しいといったデメリットがあります。

また、フラットベンチプレスに比べて大きな重量を扱いにくいといったこともあるため、大胸筋全体のバルクアップを考えた場合は、物足りなくなってしまいます。

デメリット②:肩の関与が強くなる点は注意が必要

さらに、インクラインベンチプレスを行うと三角筋も強く刺激されるため、もし肩の筋トレを翌日に行おうという場合は注意が必要です。

特に、インクラインベンチの角度を高めにして行うことで、より三角筋への負荷が強まり筋肉が疲労しやすくなります

そうすると、次の日に肩の筋肉を鍛えようとした場合、2日続けて同じ筋肉を鍛えてしまうことになり、筋肉の回復が追いつかないオーバートレーニングの状態になってしまいます。

インクラインベンチプレスを行う場合は、肩の筋肉の関与がどの程度強くなるのか把握しながら行い、翌日には肩の筋トレを行わないようにしましょう。

フラットベンチプレスのメリットとデメリット

メリット①:大胸筋を満遍なく鍛えるためにはやはりフラットで

上記のとおり、大胸筋は上部・中部・下部で構成されています。

平らなトレーニングベンチに仰向けになって行うフラットベンチプレスは、大胸筋の中部、下部をメインに刺激を与えていくことになるため、大胸筋を全体的に強化したいといった場合には絶対的に頼りになり、メリットがある筋トレ種目になります。

メリット②:より高負荷の重量を利用していきやすい

フラットベンチプレスでは、そのウエイトの挙上動作に関わる大胸筋の筋繊維が多くなるため、より高負荷のウエイトを利用していきやすいといったメリットがあります。

結果的に、胸・肩・腕を含めた、全体的としての筋肉増強効果というのは、インクラインベンチプレスより圧倒的に高いものがあるといえることになり、筋肉量や筋力のベースを作っていくうえでは大きなメリットがあります。

メリット③:実践可能な場所が多い

そして、フラットベンチプレスをインクラインベンチプレスと比較した際のメリットとしてあげておきたいもうひとつのことが、フラットベンチプレスの方が行う場所を問われにくいという点。

インクラインベンチプレスは、背もたれの角度をつけられるインクラインベンチ、または同じような姿勢を作れる器具が必要になってしまいます。

しかし、フラットベンチプレスであれば、その傾斜が必要ないため、フラットベンチがない場合でも、代わりに椅子などを利用したり、場合によっては床に仰向けになってフロアプレスを行っていくなんてことも可能。

この点はインクラインベンチプレスでは難しい、フラットベンチプレスのメリットですね。

デメリット①:ローテーターカフへの負担が大きくなる

フラットベンチプレスのマイナス面としては、上でもふれたとおり、肩への負荷、特にローテーターカフへの負荷が大きくなってしまう可能性があるという点。

そのため、フラットベンチプレスを行う際には、とにかく正しいフォームに従って行っていくことが大切

フラットベンチプレスでは重いウエイトを挙上しやすいため、つい油断して肩を痛めてしまう可能性があります。

いくら重いウエイトを挙上できたとしても、安全第一で行うには、慎重に扱う重さを調整して正しいフォームで行いながら、徐々に増やしていく必要があります

結局どちらがいいかは自分の目標次第

インクラインベンチプレスとフラットベンチプレスの両者をやり方から、効果、そしてメリットとデメリットの視点で比較してきたわけですが、結局のところ、どちらがいいかは自身の目的とするものに左右されるってことになります。

基本的には、大胸筋上部に負荷を集中させたいならインクラインベンチプレス、大胸筋を全体的に均等に大きくさせて、ボリュームを出すためのベースを作りたいならフラットベンチプレスっていう感じで考えておきましょう。

また一方で、肩関節の負担を考えた場合には、インクラインベンチプレスの方が負担も軽くなりやすく、逆にフラットベンチプレスでは、特に高負荷を利用する場合はより慎重にトレーニングしていきましょう。

インクラインベンチプレスとフラットベンチプレスの違いを比較のまとめ

インクラインベンチプレスとフラットベンチプレスの違いを比較してきました。

それぞれに長所と短所があり、どちらがいいかという結論が出るようなものではありませんが、ベンチプレスを行って大胸筋を中心に筋肉を鍛えて行く場合には、参考にしていきましょう。