ハムストリングについて、その特徴やストレッチ方法、おすすめな鍛え方、さらにはハムストリングに肉離れが起こった場合の対処方法も紹介していきます。
ハムストリングといえば人体の中でも比較的大きく、立った状態での動作、特に歩行や走行時においてとても重要な筋肉であるため、一般的にも有名な筋肉。
この筋肉、実はひとつの筋肉ではなくて、複数の筋肉をまとめて指す総称だっていうのは知っていましたか?
その点について、もしかしたら初耳という人もいるかもしれません。他にもハムストリングが具体的にどのような作用をもっているのかまではよく知らないという人は少なくありません。
今回は、具体的なことはあまり知られていないハムストリングについて、その概要から作用、他にも知っておきたいちょっとした特徴、さらにストレッチ方法やおすすめな鍛え方までを紹介していきます。
目次
ハムストリングとは?
ハムストリングとは、下肢(脚)の中でも太もも裏を縦に走行している筋肉。筋肉といっても3つの筋肉から成る「複合筋」で、半膜様筋、半腱様筋、大腿二頭筋の総称。
骨盤の後面下部の坐骨から始まり、膝関節をまたいで膝下の骨につながっているため、股関節と膝関節をまたぐ二関節筋でもあります。(ただし、大腿二頭筋の一部である短頭は股関節をまたがない)
そのため、膝を曲げる膝関節屈曲の主働筋でありながら、脚を付け根から後方へ振る股関節の伸展にも、大きく関与する筋肉であるといった特徴があります。
具体的には次のような例が挙げられます。
- 立った状態からしゃがむ(立ち居→座位)
- ハムストリングは膝関節を曲げる動作に働く
- しゃがんだ状態から立ち上がる(座位→立ち居)
- ハムストリングは股関節を伸展する動作に働く
また、歩行したり走行したりする場合には、振り出した脚にブレーキをかけて戻したり、その脚の膝下の振りを止めるといった役割をもっていたます。
この作用は、高速で両脚を交互に入れ替えて走る短距離走(スプリント)においては特に重要であるため、短距離走の選手には、このハムストリングの発達がよく見られ、「スプリンター筋」などとも呼ばれることがあります。
ハムストリングの役割と作用
ハムストリングの主な役割
- 膝を曲げる
- 股関節の伸展
- 脚を付け根から後方に振る
ハムストリングの作用
- 日常生活において
- 席に座る際に、膝を曲げる動作
- 立ち上がる際に、前傾した体勢から状態を起こす動作
- おじぎをする際などに、体を起こす動作
- 時計の針で6時の位置からおよそ9時の位置まで自転車のペダルを後方へ漕ぐ動作
- スポーツや運動において
- サッカーでボールを蹴る際に膝を曲げる動作
- ランニングやダッシュしている状態を止める(ブレーキをかける)動作
- ランニング時に股関節を伸展させて前方向への力を出す動作
- ジャンプにおいて股関節を伸展させて瞬発力を出す動作
ハムストリングに関しては、太もも裏を構成している複合筋で、膝の屈曲と股関節の伸展に関与する筋肉として覚えておきましょう。
ハムストリングの知っ得情報
ハムストリングは膝関節の筋肉?それとも股関節の筋肉?
ハムストリングは股関節と膝関節をまたぐようにして走行しており、その2つの関節動作に関与する筋肉というのは説明したとおり。
基本的には膝関節の筋肉として分類されることになりますが、実は、膝関節の屈曲と股関節の屈曲に関して貢献する強さを比較した場合、膝よりむしろ股関節に強く作用するといった特徴があったりします。
実際に、股関節の伸展に関与する筋肉の貢献度ランキングを見ると、
- 大臀筋
- 大腿二頭筋(長頭)
- 大内転筋
- 半膜様筋
- 半腱様筋
- 中臀筋(後部)
- 梨状筋
ハムストリングを構成している3つの筋肉が貢献していることが確認でき、ハムストリング全体としては、主力筋である大臀筋(筋体積864㎤)に次いで貢献度が高く、股関節の伸展動作においてはとても大切な筋肉であることが分かります。
このように、膝関節の筋肉と分類されるものの、実際の動作を見る限りでは股関節の筋肉だといえなくもないような筋肉だったりするのです。
ハムストリングは肉離れしやすい筋肉
ハムストリングといえば「肉離れ」しやすい筋肉としても有名。
「肉離れ」とは、なんらかの動作の中で、急激な張力が加わり筋肉が収縮した結果、筋繊維や筋膜の「一部」に損傷が発生してしまった状態。(これに対して筋断裂は完全に筋肉が断裂した状態を指す)
この肉離れが起こりやすい部位として、実はハムストリングは圧倒的。肉離れ全体のおよそ70%がハムストリングで起こるとされています。
特に、高速で両脚を入れ替えて走行する短距離走やサッカー選手、他にもラグビー選手などはハムストリングの肉離れを経験しやすい傾向にあります。
ハムストリングの肉離れの処置
もしもハムストリングの肉離れが起きてしまった場合は、次の通りの処置を行っていくといいとされているので参考にしておいてください。
- 肉離れ発症直後は「PRICE処置」を行う
- Protection 患部を(保護)する
- Rest(安静)状態を作る
- Icing(冷却)をする
- Compression(圧迫)をする
- Elevation(挙上)して心臓より高い位置に患部を位置させる
- 1~2週間後に痛みが緩和してきたら温めた後に軽い運動やストレッチを開始する
- 3週目ぐらいから軽いジョギングなども開始していく
- その後もハムストリングの定期的なストレッチなどを欠かさずに、再発を防いでいく
ハムストリングのストレッチ
普段の歩行動作はもちろんのこと、高速で走行することが多い運動を行っている人にとっては、肉離れを回避するためにもハムストリングはしっかりとケアしておきたい筋肉だというのは理解できたかと思います。
そこで、ハムストリングのケアをしておくためにも、いくつかストレッチ方法を紹介しておきます。
ハムストリングのストレッチ① 立ち居のストレッチ
- 高さのある台や椅子を用意します
- その台の上にストレッチをしたい側のカカトを乗せます
- その脚は伸ばしたままにしておきましょう
- つま先は天井へ向けるようにしておきます
- 膝上に両手をおいて、上体を前傾させていきます
- ハムストリングにストレッチを感じたところで30秒程度維持します
ハムストリングのストレッチ② 座位でのストレッチ
- 床に座ったら、ストレッチしたい方の脚を前方へ伸ばします
- もう片方の脚は曲げてその足裏を、伸ばした脚の内ももへつけておきましょう
- 伸ばした脚のつま先は天井へ向けておきます
- つま先を掴み、上体を前傾させていきます
- ハムストリングのストレッチを感じるところで30秒維持しましょう
ハムストリングのストレッチ③ 補助ありなら試したいストレッチ
このハムストリングのストレッチは、トレーニングパートナーなど手伝ってくれる人がいる場合に試したい方法。
ハムストリングを十分にストレッチできるのでおすすめです。
- 仰向けになります
- ストレッチしたい方の脚を伸ばしたまま上げていきます
- パートナーへその脚を支えてもらいます
- 片手で足首の裏を支え、もう片方の手で、太もも前面を抑えてもらうようにしましょう
- パートナーに脚を真っ直ぐに維持した状態で、さらに高く動かしてもらいます
- ハムストリングのストレッチを感じるところで30秒維持しましょう
ハムストリングの鍛え方に有効な筋トレ
ストレッチでハムストリングでケアしながらしっかりと強化して、力強いスポーツ動作へつなげたり急激な収縮にも耐えられるようにして肉離れを回避していきましょう。
ハムストリングに効果のある筋トレをいくつか紹介しておきます。
ハムストリングの筋トレ① シーテッドレッグカール
普段からジムに通うことがあれば、おそらくそこにはレッグカールができるマシンがおいてあるはず。その中でも、座った状態で膝関節の屈曲動作を行える、シーテッドレッグカールマシンは一般的。
ハムストリングを強化するためにも、マシンの負荷を利用しながら鍛えられるこのシーテッドカールはおすすめな鍛え方のひとつです。
- 専用マシンのシートに座り、背中を背もたれにつけます
- 脚パッドの上に両脚の足首を乗せます
- 膝を曲げて脚パッドを体の方へ引き寄せていきます
- その後、負荷に耐えながら元の位置へ戻し繰り返していきます
ちなみにジムによっては、シーテッドレッグカールマシンではなく、マシンの上にうつ伏せになって行うライイングレッグカールマシンが代わりにある置いてあるところもあります。
その場合でも、効果に関しては変わらないので代わりにライイングレッグカールに取り組んでいきましょう。
ハムストリングの筋トレ② グルートハムレイズ
グルートハムレイズは、動作の中で股関節の伸展と膝関節の屈曲の2つの動きが加わる、まさしくハムストリングのためにあるような筋トレ。
バックエクステンション台、グルートハムベンチ、ローマンチェアなどを利用できたり、トレーニングを補助してくれる人がいるのであれば、ハムストリングの鍛え方としてとてもおすすめな方法になります。
- グルートハムベンチやバックエクステンション台にうつ伏せになります
- 太ももの真ん中から下がパッドに乗るようにします
- かかとは脚を支えるローラーの下にあてます
- 台から下の方へ、背中の自然なカーブを保ちながら上体を折り曲げていきます
- 上体が床と平行になるまで上げていきます
- そこからさらに、膝を曲げながら上体を引き上げていきます
- ゆっくりと下ろしていき、繰り返します
また、補助してくれるパートナーの助けを借りられる場合は、床にうつ伏せになって行うことも可能。パートナーに両脚をしっかりと支えてもらい、膝を屈曲させて上体を起こした状態をつくります。
その後にゆっくりと膝を伸ばしながら、上体を前方に倒していき、床にうつ伏せになっていきます。
ただし、ハムストリングが硬い人は怪我の恐れがあるので注意して行っていきましょう。
ハムストリングの筋トレ③ デッドリフト
デッドリフトはとても有名な筋トレ。
動作の中では股関節の伸展を中心に、膝関節の伸展も含まれ、さらに重いバーベルを支えるために体幹の筋肉の貢献度も高くなるため、股関節の伸展に働くハムストリングや大臀筋以外にも、脊柱起立筋や大腿四頭筋、他にも広背筋や僧帽筋といった多くの筋肉を鍛えていける方法。
ハムストリング以外にも、多くの筋肉を一緒に筋トレしていきたい場合などにおすすめな筋トレです。
- バーベルを体前面の床に置いて、肩幅程度に両足を開いて立ちます
- しゃがんでいき、バーベルを順手で握ります
- 目線は正面に向け、胸を張って背筋を伸ばしておきましょう
- 上体はおよそ45度に前傾します
- 腰は膝より高くなるようにしておきましょう
- バーベルをもったまま上体を起こして立ち上がります
- 膝がつま先より前に出ないようにします
- バーベルは手の力で引き上げないで、ヒップヒンジ(股関節伸展)の動きで上げていきます
- 背筋は伸ばしたまま上体を起こしていきましょう
- その後、ゆっくりと股関節と膝関節を曲げてバーベルを地面に下ろしていきます
ハムストリングとは?ストレッチから筋トレに有効な鍛え方・肉離れになった際の対処法までのまとめ
一般的にも有名で一度は聞いたことがあるハムストリングについて、概要や特徴、他にもストレッチ方法や筋トレ方法を解説してきました。
ハムストリングは大切だけど故障しやすい筋肉。
特徴を理解した上で、しっかりとケアしていき付き合っていきましょう!