懸垂(チンニング)の効果とやり方、さらに鍛えられる筋肉について確認してみましょう。背筋の筋トレとしては絶対的な信頼と人気を誇る筋トレ種目のひとつ。背中を中心に効果は抜群です。
部位別の種目が山のようにあり、正しいフォームの習得も必要な筋トレ。その中でも子供の頃から経験していて、大人になって行っても効果絶大な筋トレがあります。
それが懸垂。鉄棒にぶら下がって体を上げ下げする、あの運動のことですね。子供の頃を思い出して、チャレンジしてみましょう。
もちろん懸垂は、すでに筋トレをしている人にもおすすめ。逆三角形のかっこいいシェイプされた背中づくりに効果絶大。
今回は、懸垂の効果とやり方、さらには鍛えられる筋肉までを解説していきます。
目次
懸垂の概要
懸垂は自分の体重を利用して行い、自重の筋トレの中でも背中や腕など上半身全体を効果的に鍛えていくことができる筋トレ種目。
背中の中でも最も大きな広背筋や大円筋、僧帽筋、菱形筋などにも大きな負荷を加えることができ、さらに肘関節を屈曲させる筋肉群やお腹周りの筋肉へも刺激を加えていくことが可能になります。
また、基本の懸垂のやり方を変える(グリップの幅や向きを変えるなど)ことで、関与する筋肉の貢献度を調整したり、追加したりすることができるのも優れた特徴のひとつ。
また、自分の体重を支えてぶら下がれる場所さえあれば気軽に始めることができるため、筋トレ初心者からでもおすすめな筋トレ種目です。
懸垂の動作では、ひとつの動きの中で複数の関節が関与することになり、それに伴い多くの筋肉も同時に貢献していくことになるため、多関節種目(コンパウンド種目)の筋トレとして分類されます。
懸垂のまとめ
運動タイプ | 筋力トレーニング |
筋トレタイプ | コンパウンド |
筋トレレベル | 初級〜中級者 |
力の出し方 | 引く力 |
必要な道具 | 自重、ぶら下がる場所 |
メインターゲット | 広背筋・大円筋・僧帽筋・菱形筋など |
懸垂のトレーニング方法(やり方)
懸垂のやり方には両手の幅を広げたり狭めたりする方法やグリップを順手にしたり逆手にしたりする方法、他にも様々なやり方がありますが、ここでは最も基本となる順手のグリップで、狭すぎず広すぎずに両手の幅を取った通常の懸垂の方法を紹介していきます。
懸垂ができるバーを肩幅より拳2個分ほど広く握ってぶら下がります。この時グリップは順手で握っておきましょう。足は後ろで組み、臀部(お尻)の方へ軽く寄せておきます。こうすることで、動作中に体がぶれないようにできます。
目線を上げ、バーの中央あたりに視点を合わせたらセット完了。
そのまま肩甲骨を寄せるようにして背中の力で体を引き上げます。この時できる限り体を持ち上げていきましょう。(※可能なら胸の上部あたりがバーにふれるぐらい、または顎がバーにつく程度まで上げましょう。)
ひじがしっかり曲がり体を上げた状態で1秒程度静止したら、ゆっくりと体を下げて元に戻っていきます。
まずは8~15回×3セットを目安に行っていきましょう。
懸垂のやり方のバリエーション
懸垂のやり方はとても種類が多く、紹介した基本的なやり方以外にたくさんの方法があります。
その中でも、一般的に広く行われるバリエーションが逆手で行う逆手懸垂、両手の幅を狭くするナローグリップチンニングや逆に広くとって行うワイドグリップチンニング。
まず逆手で行う逆手懸垂の場合、上腕前面にある上腕二頭筋や上腕筋、さらに前腕の腕橈骨筋の関与が大きくなり、これら筋肉を鍛えていく効果も生まれてきます。しかし、逆にいえば背筋の貢献度を下げることにもつながります。そのため、まだ背筋力が弱い初心者は逆手懸垂がおすすめです。
また、両手の幅を狭くしたナローグリップチンニングの場合、より僧帽筋の中部や下部への刺激を強くすることで背中のボリュームアップ、そして両手幅を広くしたワイドグリップチンニングでは大円筋の貢献度を増やすために、背中の横への面積を広げるといった効果が高くなります。
懸垂のやり方のポイント
懸垂は背筋を集中して使うことが重要なポイント。体を持ち上げる時には、腕の力をメインに使うのではなく、背筋の力で持ち上げていくことが大切です。
肩甲骨を寄せるようにし、背中の筋肉がギュッと凝縮されるようなイメージで行うと上手くいきます。また、ネガティブ動作(体を下ろす動作)をゆっくり行って背筋を十分にストレッチさせていき、広背筋へ効かせていきます。
また、動作中は胴体を動かさないことも大切。もし胴体がぶれてしまったり、背中への負担が強いと感じた場合は、膝を軽く曲げ足首を交差させることで、胴体を固定して背中への負担を軽くすることができます。
グリップは背筋に効かせるために、できれば逆手にはせず順手で握るようにするのがオススメです。順手でできなければ、逆手で行っても大丈夫ですが、効果を最大化するためにもいずれ順手で行えるようにしましょう。
懸垂で体を上げ下げの目安は、上げる時はあごがバーにつくまであげ(理想は胸がバーにふれるまで)、下げる時は肘が伸び切らない程度まで下に下げるようにしましょう。可動域の最大まで上げ下げすることを意識してください。
懸垂で鍛えられる主な筋肉をさらに詳しく!
懸垂は最も代表的であると同時に、正確にやろうとすると意外に難しい筋トレ。でも、しっかりとトレーニングすることで、複数の筋肉を鍛えていくことが可能。
既に軽く触れた懸垂で鍛えられる筋肉について、より詳しく紹介しておきます。
懸垂で効果のある筋肉①:広背筋
広背筋は背中の中で1番大きく、懸垂の効果を最も受ける筋肉です。この筋肉は脇下外側から背中の下の方へ向かって広がり、懸垂では腕を曲げて体を持ち上げる時に稼働します。
よって、懸垂の効果を大きく受ける筋肉。反対に、正しく行わないとケガをしやすい筋肉でもあります。
懸垂で効果のある筋肉②:菱形筋
菱形筋は背中にあり、広背筋に隣接しています。菱形筋は僧帽筋に覆われて深層部に位置するいわゆるインナーマッスル。広背筋を支えてもいるので、懸垂を行う時に大きな効果を得ます。
さらに菱形筋のようなインナーマッスルが強化されることで、体幹の強さも底上げされることになります。
懸垂で効果のある筋肉③:大円筋
脇の下辺りに位置している筋肉で、広背筋とともに、物を引っ張るような動きや上にある物を下へ引いていく動作において働きます。
懸垂で鍛えられる筋肉としては、広背筋がメインだとしたら大円筋はサブ的に鍛えられると考えておけばいいでしょう。
大円筋の形成が逆三角形の背中を作るうえでも大切なので、この筋肉を懸垂でしっかりと刺激できるかどうかもボディメイクの視点からは大切です。
懸垂で効果のある筋肉④:僧帽筋下部
僧帽筋はシュラッグ(筋トレ種目)などで鍛えられる、肩中央から背中中部まで広がる上半身の中でも大きな体積を持つ筋肉のひとつです。
僧帽筋は上部、中部、下部に分かれていて、それぞれの働きが異なり、懸垂を行うことで僧帽筋の中でも下部の筋肉が鍛えられます。
懸垂で効果のある筋肉⑤:腕の筋肉
懸垂の大きなメリットに、さまざまな筋肉を同時に動かすことがあります。アイソレーション種目(単関節運動)と違って、懸垂は腕に関しても多くの筋肉や関節を使います。
肘を曲げるのに上腕筋や上腕二頭筋を使い、懸垂の仕上げを行います。他にも前腕の筋肉に関していうと、さらに多くの筋肉が含まれてきます。
このように、懸垂ではこれらさまざまな筋肉群が効果を得ることになります。
懸垂の筋トレ効果
懸垂は上半身全体の強化はもちろん、背筋を集中して鍛えることができる筋トレ。
そのため逆三角形の背中づくりの他に、背中のシェイプアップにもつながります。男性にはたくましくかっこいい背中を、女性には綺麗に絞れたたるみのない背中をつくることができます。
また、引く動作全般で発揮できる力を高めるため、柔道やレスリングなどで相手を引きつける力やボート漕ぎでオールを引く動作などを強化することも可能です。
また、カロリー消費や脂肪燃焼効果も大きな期待ができます。懸垂では鍛えられる筋肉が複数あり、中には広背筋や僧帽筋といった筋体積が大きなものも含まれます。これら大きな筋肉を鍛えることは、基礎代謝を底上げするのに有効になるのです。
懸垂の注意点
懸垂は自分の全体重を支える分ハードな筋トレですが、ネガティブ動作(体を下ろす動作)は必ずゆっくり行うようにしましょう。
また、回数を伸ばそうとするあまり、背筋ではなく腕の力で体を上げてしまう人が多いのですが、それでは背筋の筋トレになりません。腕の力ではなく、背筋をしっかりと使うようにすることが大切です。
そして、体の反動を使わないように注意してください。よくいるのが、足を大きくふって勢いをつけている人です。体を持ち上げる際に肩甲骨をよせて、背筋を収縮する意識を持って行うと背筋に効果があります。
さらに始める際には、体を温めるためのストレッチを行ってから懸垂を開始しましょう。筋肉を可動域を広げて怪我の防止にもなるのでおすすめです。
最後に懸垂ができない場合に試したいコツや方法を紹介!
もしも懸垂がすぐにできないのであれば、次のようなコツや方法を試して少しずつ必要な筋力をつけてみましょう。
アイソメトリックチンニング
- バーの真下に椅子を用意します
- イスの上に乗り、通常の懸垂を行うようにバーを握ります
- イスから離れ、アゴがバーの上にくるまで体を持ち上げます
- その状態で30秒静止します
- その後、両腕がまっすぐになるまで体を元の位置に下げていきます
- この動きを5回繰り返しましょう
このアイソメトリックチンニングのコツは、体を一定の位置で維持し続け、そして体を元の位置に下げる時にはゆっくりとコントロールしながら行う点。
体を持ち上げるために必要な筋力をアップしていけば、イスなしでも体を引き上げていけるようになります。
アシストチンニング
これはジムに置いてあるマシンなので、ジムに通っている人は参考にしてみてください。このマシンは自重で懸垂ができない人がおもりのアシストをつけて懸垂していくものです。
- おもりをセットする
- マシンの台の上にバーを握りながら膝立ちの状態になる
- バーを握って体の上げ下げをする
おもりの重さを調節しながら行えるので、段階をふんで背筋力をつけていくことができます。体の上げ下げの目安や回数、セット数は懸垂のトレーニング方法で紹介したのを参考にしてください。
懸垂(チンニング)の効果・やり方・筋肉|背筋の筋トレやるなら絶対必須!のまとめ
懸垂の効果・やり方・使う筋肉などについて詳しく解説してきました。
「筋トレ」というと、難しい知識が必要で敷居の高いイメージをもっているかもしれませんが、懸垂のように実は子供の頃から身近に行っていたものもたくさんあります。
今まで筋トレに1歩踏み出せなかった方はも、まずは懸垂のように自重でチャレンジできる筋トレから初めてみるといいですよ。
また、すでに筋トレをしているという人でも懸垂はしっかり効かせるとかなりハードな筋トレであるのがわかります。その分背筋への効果は絶大なので、王道のデッドリフトなどとともに上半身の筋トレメニューに加えてくださいね。
今後の懸垂を成功させるためにも、懸垂の平均回数も確認して頑張っていきましょう!