カタボリックの防止と抑制方法を紹介していきます。筋肉の分解を出来るだけ抑えて、効率的に成長させるためにも確認しておきましょう。
カタボリックの防止と抑制方法について知っておくことは、筋トレをして筋肉の成長を考える上でとても大切なこと。
というのも、カタボリックが助長されてしまうと、筋肉の分解が進んでしまい、筋肉を大きくしたいと考えている人にとっては、最大の的として立ちはだかってくることになり、筋肉の増強を考えた場合、出来る限り避けていきたい状態であるから。
そこで、そのカタボリックを防止・抑制するための方法を7つ紹介していきます。筋肉を効率よく成長させるためにも、確認してみましょう。
目次
カタボリックを防止・抑制するために知っておきたい8つの知識
まずは敵を知り、カタボリック作用のプロセスを理解する
カタボリックの防止・抑制方法に関して考えると言っても、まずは敵を知るためにも、カタボリック作用についての理解を深めておくことが大切です。
カタボリックは自然な体内メカニズム
体内では食べ物を摂取した瞬間から、大きな分子が小さな分子に分解される自然なプロセスが発生していくわけですが、この分解する自然なプロセスをカタボリックといいます。
つまり、カタボリック作用で消化プロセスが始まり、食べ物が栄養素に分解されていくのです。そして、その過程で、栄養素が含んだ分子から、体を維持したり動かしたりするためのエネルギーが放出されることになるわけ。
また、このカタボリックのプロセスでは、アデノシンが作られることに。
このアデノシンに3分子のリン酸が付いたアデノシン三リン酸は、筋トレ中のエネルギー供給においても、とても大切なエネルギーであり、実は筋肉も含めた体内の細胞や組織に欠かせないエネルギーを供給し、健全な動きや働きを保つためのとても重要なプロセスであったりするのです。
ただし、カタボリック作用は悪影響を与えることもある
カタボリックは、体が必要とするエネルギーを供給するために大切である一方、健康に悪影響を与えることにもなってしまったり。
これはカタボリック作用が、アナボリック作用(小→大:小さなものを大きなものへ合成する作用)よりも大幅に活発になった時に起きる問題。つまり、次のように、プロテインバランス(筋タンパク質の合成と分解のバランス)が崩れた状態。
カタボリック量>アナボリック量
このような状況で、筋組織の分解が行われたり、体内に蓄えられている必須脂肪が枯渇してしまったりして、体にとって良い影響とは言えないことが起こってきてしまうのです。
安静時の人間の体では、各組織の回復を促すアナボリック状態でいることが理想。しかし、体内のカタボリック作用が速すぎる、又は多すぎる場合、体は「長期にわたり休息していない状態」になってしまいます。
結果的に、筋肉も含めた細胞が破壊され、力が出ないと感じるようになり、疲れやエネルギー不足感を1日中味わうことになったり、免疫機能が低下することがあります。
そして、本来増強したい筋肉量が減ってしまったり、トレーニング中に力が思ったように出せない、怪我をしやすくなってしまうといったことに繋がってきてしまうのです。
筋トレでカタボリックを引き起こす主な原因
そして、筋トレを軸に考えた場合、このカタボリックが発生する理由の最も一般的な理由は、次のどちらかである場合がほとんど。
- 長すぎるトレーニング時間
- 栄養不足(エネルギー不足)
つまり、筋トレにおいてカタボリックを防止・抑制したい場合、上記二つを防ぐようにして、カタボリック作用が起きるスピードを遅めることができれば、ほとんどの場合、カタボリックを防止・抑制出来ると言えるのです。
<豆知識>カタボリック作用に関わるホルモンも紹介
- コルチゾール
- コルチゾールは、不安感をもたらし、血圧や血糖値を高めるといった影響や、免疫反応を低下させてしまうといったネガティブな効果を持っているストレスホルモン。
- コルチゾールが持つカタボリック作用の影響力はとても強く、分泌が多くなってしまうと、それだけ筋肉の分解がされやすくなってしまう。
- アドレナリン
- 副腎髄質によって分泌される有名なアドレナリンも、実はカタボリック作用に関わるホルモンの一つ。
- アドレナリンは心臓の収縮を強めるために心拍数を上昇させる他、肺の細気管支を開く働きも持っていたり、攻撃・闘争反応を引き起こす働きもあるとされます。
- サイトカイン
- サイトカインは、細胞間のコミュニケーションや、細胞の働きには欠かせない、大切な役割を持つ小型のタンパク質ホルモン。
- 多くの種類がある中で、一部はカタボリックにも関与する、カタボリックサイトカインとして知られています。
- グルカゴン
- グルカゴンもカタボリック作用に関わるホルモン。このホルモンは膵臓(すいぞう)のα細胞によって合成・分泌されるもの。
- 筋肉を動かすためにも大切なエネルギー源である、グリコーゲンの分解を促進するといった働きを持っているホルモンです。
タンパク質摂取を忘れない
筋肉を構成している筋タンパク質に大切な栄養源と言えばアミノ酸。
アミノ酸を供給して、いつでも筋肉が合成を出来るように血中アミノ酸値を高めておくことこそが、筋肉が合成されやすいアナボリックの状態を高め、カタボリックのスピードを遅らせることに繋がります。
そこで重要なのが、タンパク質を十分に摂取するということ。タンパク質は、体内に吸収された後、アミノ酸へ分解されるため、血中のアミノ酸値を高めていくことが出来ます。
トレーニング後は、血中アミノ酸値が低くなり、カタボリック作用が強くなりがちなので、筋トレ直後に吸収の早いホエイプロテインなどを飲んで、タンパク質を補給していくことが、カタボリックの防止・抑制のためにも有効になってきます。
炭水化物+タンパク質がさらにおすすめ
ちなみに、タンパク質のみで摂取した場合よりも、炭水化物を一緒に摂取した時の方が、筋肉の合成を促進するアナボリック作用を高め、カタボリックの状態を抑制する効果が高いとされます。
そのため、特に筋トレの直前や直後など、すぐに体内へ炭水化物もタンパク質も吸収したい場合などは、ホエイプロテインと一緒に、吸収の早いフルーツなどの炭水化物を一緒に摂るのがおすすめ。
最近では、プロテインと吸収の早い炭水化物を含み、トレーニング前後の栄養補給にも優れたDNSのプロエックスなんかも市販されているので、利用してみましょう。
GABA(γアミノ酪酸)も利用してみる
γアミノ酪酸(ガンマアミノらくさん)又はGABA(Gamma Aminobutyric Acid)の摂取も、カタボリックの防止・抑制方法としては効果があるかもしれないと言われていたり。
GABAは神経伝達物質としての働きを持つアミノ酸。そして、トレーニング後や休息時にGABAを摂取することで、成長ホルモンの分泌を高めると言われています。成長ホルモンは、筋肉の合成を促し、筋トレ後の筋繊維の修復から成長までを促していく効果を持っています。
そのため、GABAで成長ホルモンの分泌を高められれば、筋肉が分解してしまうカタボリック以上に、筋肉の合成量を増やすことが出来、プロテインバランスを「合成>分解」の状態に導き、維持していく効果が期待出来る。
また、GABAは他にも、
- 心身を落ち着かせる
- 中性脂肪の抑制
- 肝臓・腎臓機能の向上
といった作用もあるとされるため、これらの効果を期待しながらカタボリックを抑制していくためにも、GABAのサプリメントを利用していくというのが一つの方法として考えられます。
ビタミンCを摂取する
ビタミンCを摂取するというのも、カタボリックの防止・抑制に間接的に効果が出てくる方法。
ビタミンCは、カタボリックを引き起こす最大のホルモンであるコルチゾールの分泌を抑制する効果があり、コルチゾールの分泌が抑制された結果、カタボリックも引き起こされにくくなり、筋肉が合成しやすいアナボリック状態を維持しやすくなってくる。
そのため、サプリメントでも、自然食材からでも良いので、十分にビタミンCを摂取しておくことが大切。
ただし、このビタミンCが正常に機能するためには、他のビタミンやミネラル、例えばビタミンB6やビタミンB12、他にも亜鉛や葉酸などが必要になってくるため、効率よくミネラルも含むマルチビタミン、ミネラルのサプリメントを利用してみるというのがおすすめです。
(参照:bodybuilding.com)
筋トレは太く短く
そして、カタボリックを防ぐためにも忘れてはならないのが、「無駄に長いトレーニングをしない」ということです。最初の方でも簡単に触れた通り、トレーニングの時間が長くなれば長くなるほど、カタボリックの状態は起こりやすいです。
これは、トレーニング時間が長くなれば、その分体内にあるエネルギーが枯渇していき、足りなくなったエネルギーを確保しようと、体は筋肉を分解してエネルギーを取り出そうとし始めるからです。
つまり、無駄にダラダラと長い時間体を動かすトレーニングを行うのではなく、必要十分以上の時間を費やさないように、「短く太く」筋トレを行っていくことが大切ということ。
一般的な人であれば、筋トレの時間は40分もあれば十分で、1時間を超えてくるようなら、一度筋トレメニューの内容を見直してみましょう。
どうしても筋トレが長くなるならBCAAやスポーツドリンクを摂取しておく
筋トレを「短く太く」と言ってみたものの、ボディビルダーやプロのアスリートを目指す場合は、どうしてもトレーニング時間が長くなってしまうこともあります。人によっては、1時間以内に全てのトレーニングを終了させるなんていうのは不可能。
特に、筋肉が発揮出来る筋トレの場合、セット間に2~3分は最低でも休憩をとるのが当たり前。他にも有酸素運動などを含んだメニューだと、余裕で1時間半や2時間を超えてくることもあります。
このように、トレーニングが長時間になってしまう場合、十分に糖分が含まれたスポーツドリンクやBCAA(分岐鎖アミノ酸)を、トレーニング中に摂取するのが有効。スポーツドリンクは、筋肉を動かすエネルギーであるグリコーゲン補給のためのもの。そしてBCAAは、筋肉の合成や修復、長時間のトレーニングにおいてはエネルギーとしても使われるアミノ酸。
どちらも、吸収スピードが早いため、トレーニング中であっても、必要な栄養素をすぐに体内へ充満させていくことが可能になり、カタボリックの防止・抑制に繋がってきます。
有酸素運動を変えてみる
有酸素運動もカタボリックにとっては大敵です。
決して有酸素運動自体がカタボリックを引き起こすわけではありませんが、一般的に有酸素運動は長時間行われることが多いため、結果的に、有酸素運動を行うと、筋肉の分解が合成を上回ってしまい、カタボリックになってしまうということがよく起こります。
この際、例えば上に挙げたようなスポーツドリンクやBCAAを摂取するといった方法も有効ですが、他にも有酸素運動自体を変えてしまうというのも効果的な方法。もし有酸素運動を、心肺機能強化や脂肪燃焼目的で行っているなら、HIIT(高強度インターバルトレーニング)やサーキットトレーニングに変更してみましょう。
HIITもサーキットトレーニングも、短時間(20分程度)の運動にも関わらず、心肺機能強化や脂肪燃焼効果は、長時間の有酸素運動と変わらないとされており、さらに短時間なため、カタボリック状態になる前にトレーニングを切り上げることが出来ます。
リラックスする
そして最後にカタボリックの防止・抑制方法として覚えておきたいのが、リラックス出来る環境を作るというもの。
カタボリックは、ストレスを感じた時に分泌されるコルチゾールによっても助長されてしまうのは、既に触れた通り。そのため、出来る限りストレスが掛からない環境を作ってみたり、ストレスを感じている時は積極的にリラックスすることが大切。
瞑想やヨガ、サイクリングやハイキングといった感じで、普段の筋トレや有酸素運動以外にも、メンタル面を改善するためのちょっとした運動や、アクティビティに取り組んでみると良さそうです。
カタボリックの防止と抑制方法8選!筋肉の分解を防いで筋肉の成長につなげるために。のまとめ
カタボリックの防止と抑制につながる方法を8つ紹介してきました。
筋肉の分解を防いで、出来るだけ多くの筋肉を合成していくためにも、カタボリック状態を低く抑えておくというのは大切です。今回紹介したポイントを参考に、カタボリックとアナボリックのバランスを改善していきましょう!