デッドリフトのフォームに関して、9つのよくある間違いと対策方法を見ていきます。デッドリフトで大きな効果を手に入れるためにも確認してみましょう。
理論上、デッドリフトは床からウエイトを持ち上げるだけですが、実際のところ、安全に最大限のパフォーマンスを発揮しながらデッドリフトをおこなっていこうとすると、フォームの練習やテクニックがかなり必要とされるのが分かります。
そのため見方を変えれば、それだけ筋肉を鍛える効果も抜群な筋トレ種目であるのも確か。
であれば一度、デッドリフトのやり方とフォームのよくある間違いを確認して、もし間違いに気付かずにおこなっているなら、すぐに修正を加えて安全に効果的なデッドリフトができるようにしていきましょう。
初級者からデッドリフト経験者までが確認しておきたい、デッドリフトの9つのよくある間違いと対策方法を見ていきます。
デッドリフトのフォームでよく起こる9つの間違いとその対策方法
デッドリフトのフォーム間違い①:スクワットしてる
デッドリフトのやり方の中でも、おそらく最も起こりやすいであろうフォームの間違いが、バーベルを手に握ってぶら下げた状態のスクワットになってしまっているってもの。
膝を曲げてバーベルを握ろうとする際に、一緒に腰まで落として、まるでスクワットのボトムポジション(体を下げた際のポジション)のような状態から始めようとするのは、デッドリフトのやり方としてはNG。
これでは結局、バーベルを挙上する際の力の使い方もスクワットになってしまって、デッドリフトの筋トレではなくなってしまうことになります。
この間違ったフォームへの対策方法
デッドリフトとスクワットは、ウエイトを挙上していく際にそれぞれ、股関節伸展(脚を後方に振る際に働く股関節動作)と膝関節伸展(膝を伸ばす動作)が含まれますが、次のような違いが確認できます。
デッドリフト
- 腰をスクワットほどは下げない
- あくまでも股関節を起点に上体を45度程度前傾させる
- バーの挙上は圧倒的に股関節伸展(ヒップヒンジ)でおこなう
- 膝関節伸展より股関節伸展の方が圧倒的優位な種目になる
スクワット
- 腰は深く下げていく(太ももが床と平行になる程度まで)
- 上体の前傾は45度未満
- バーの挙上時は、膝関節と股関節伸展をバランスよくおこなう
- 膝関節伸展と股関節伸展の一方が圧倒的優位になることはない
デッドリフトをおこなう際は、基本的にはハーフスクワット(膝を通常のスクワットほどは曲げず、腰もそこまで下ろさないスクワット)と同じような膝の曲げ具合でセットアップしてみましょう。
ポイントとしては「常に腰が膝よりも高い位置にあるようにする」と覚えておくと、セットアップの際に、正しいフォームになっているかどうか見分けやすくなります。
デッドリフトのフォーム間違い②:腕を曲げている
デッドリフトのフォームのよくある間違いあるあるで上位なのが、ウエイトを挙上する際に腕を曲げていき、腕の力を使って重いウエイトを挙上しようとしていること。
デッドリフトは主に、膝関節と股関節、そして体幹の動作(姿勢を伸ばすために関与している)でおこなう筋トレ種目であり、そこに肘関節の動作は含まれないので、100kgを超えるようなウエイトを、肘関節を曲げて持ち上げることはとっても危険。
デッドリフト中に腕を曲げて超高重量を上げようとした結果、肘関節を曲げる際の主力筋である上腕二頭筋を断裂してしまうといった怪我が起こってしまう可能性があります。
この間違ったフォームへの対策方法
このデッドリフトの間違ったやり方に対する対策方法はいたって簡単。
それは、腕を曲げてデッドリフトをしないということだけ。
デッドリフト中は「自分の腕は体につながるただのロープであり、その先にある手がフックの役割をしてバーベルを支えているだけ」といったイメージを持ち、不要な腕の力を抜いておこなっていきましょう。
デッドリフトのフォーム間違い③:背中が丸まっている
デッドリフトのやり方やフォームの間違いの中でも、特に初心者に起こりがちな間違いが、背中を丸めてしまっているということです。
これは初心者の場合、自分の筋力を理解していないため、本来扱うべき以上の負荷を利用してしまい、純粋に背筋を真っ直ぐに伸ばしておくための筋力(脊柱起立筋やお腹周りの体幹の筋肉の力)がたりていないというのが最も多い原因です。
他にも、正しいフォームを事前に確認してトレーニングしていなかったというのも理由としては多いです。
ちなみに背中が丸まってしまうと、大きな負担が脊柱にかかり、背中や腰の痛みが発生してしまい、怪我の原因にもなりやすいので注意が必要です。
この間違ったフォームへの対策方法
動作中は、しっかりと背すじを伸ばした姿勢を維持することを意識しましょう。
もし背中が丸まってしまっているなら、まずは扱っている重量を減らしてみて、背中を真っ直ぐに維持できる適切なウエイトへ調整していきまましょう。
他にも、背中を曲げないとバーベルを地面から挙上できないといった場合は、もう少し膝関節と股関節を曲げて、バーベルを握ってみましょう。
それでも、バーベルを地面から上げる時に背中が曲がってしまう場合は、セット時にバーベルを地面から高い位置に置いて開始する(ブロック)ボックスデッドリフトをおこなって、まずは必要な筋力をつけていくなんていう方法もいいですね。
デッドリフトのフォーム間違い④:膝を伸ばすタイミングが間違っている
デッドリフトのやり方を理解していないばかりに、膝を曲げるタイミングを間違えてしまい、通常のデッドリフトのつもりが、いつの間にか膝を伸ばし気味でおこなうルーマニアンデッドリフトになってしまっているなんてのも、よくある間違いのひとつ。
ルーマニアンデッドリフトを最初からおこなうつもりであれば、腰をしっかりと固めて開始するはずなので、通常であれば大丈夫なはず。
しかしそうでない場合、膝が先に伸びることで腰の角度がきつくなり、通常のデッドリフトのつもりでバーベルを挙上すると、準備出てきていない腰に大きな負担がかかり、痛めてしまう可能性が高くなってしまいます。
この間違ったフォームへの対策方法
デッドリフトでバーベルを床から離していく時にも、基本的には股関節の伸展動作で離していくようにします。
つまり、
- 股関節の伸展を開始する
- →バーベルが床から離れる
- さらに股関節を伸展させていくと同時に、膝関節も少しずつ伸展させていく
- 完全に上体が起きた体勢になる
といった順番でおこなっていくようにして、膝を伸ばすタイミングを間違わないようにしていきましょう。
デッドリフトのフォーム間違い⑤:トップポジションでふんぞり返る
ウエイトを持ち上げる姿をよりよく見せようとしているのか、デッドリフトのトップポジション(ウエイトを挙上した時のポジション)で、ふんぞり返った(背中を反る)ような姿勢になっている人がたまにいます。
しかしこれは、デッドリフトのフォームとしては間違い。デッドリフトの中で前傾した上体を起こすための関節動作は、あくまでも股関節伸展。
上体を前傾させた時に後ろへ移動した骨盤を、前に突き出すように動かすことで上体を起こすだけであり、そこには体幹を反らす動作は含まれません。
デッドリフトにおいて体幹の動作は、あくまでも姿勢を真っ直ぐに維持するために伸ばす程度であって、脊柱を思い切り反らすようなことは決して必要ありません。逆に、高負荷がかかった状態で、背中を無理に反らそうとすると、椎間板ヘルニアなどの怪我を引き起こしてしまいます。
この間違ったフォームへの対策方法
デッドリフトのやり方の中で大切なのは、ヒップヒンジの動き(腰を支点に体を起こしていく動作)。基本的にはヒップヒンジで上体を起こしたら、自然と体は真っ直ぐに直立した体勢になるはずです。
逆に、それ以上股関節を伸展させることはできないはずで、自然と真っ直ぐに直立した状態より後ろに体が反っていく場合、脊柱を反らしていることになります。
脊柱を反らさないようにするためにも、デッドリフトで上体を起こした際には、背中を意識するのではなく、お尻の筋肉を思い切り収縮させることを意識するのがポイント。
そして、お尻を十分に収縮できたら、次にウエイトを下げていくようにすれば、背中を反らすことがなくなってくるはずですよ。
デッドリフトのフォーム間違い⑥:セットアップ時にバーから離れすぎている
効率的にデッドリフトをおこなうためには、スタートからフィニッシュまでのバーベルの軌道をできる限り短くする必要があります。
そしてそのためには、バーベルが上がっていく際の軌道が、完璧な縦のラインをえがくようになることが大切。つまり、トップポジションでのバーの位置は、床に置いてあった位置の真上にくることが理想ということです。
しかし、バーを床に置いてその前に立った時の位置が、バーから離れすぎていることがよくありますね。
このデッドリフトのやり方だと、バーベルを挙上する際に肩の前面に大きな負荷がかかり、純粋な膝関節と股関節の伸展動作だけでおこなえなくなってしまって、高重量を持ち上げるのが不可能になるばかりか、肩関節の怪我につながってしまいます。
この間違ったフォームへの対策方法
この間違ったフォームを修正するためにも、セットアップ時に両足とバーの位置を意識して確認することが大切。
バーベルをセットしてその前に立った時に、足の甲のちょうど真ん中辺りの上にバーが来るようにセットしてみましょう。
そうすると、スネのスレスレのラインを通って、バーベルを引き上げていくことになり、バーベル挙上の軌道が真っ直ぐのラインになってきます。
- バーベルが足の甲の真ん中の真上にくるようにするセットする
- バーを上げる時は、スネのスレスレを通っていくようにする
この2点を意識しながらおこなっていけば、正しいやり方になりますよ。
デッドリフトのフォーム間違い⑦:歩幅に無関心
デッドリフトをやる際、あまりにも腰やバーベルの位置にばかり意識が向いてしまい、歩幅に関して無関心になってしまうなんてこともよく起こりがちなミス。
歩幅が広がり過ぎると、通常のデッドリフトで強化したい大臀筋やハムストリングへの負荷よりも、内ももの内転筋群や太もも前面にある大腿四頭筋への関与が強まり、スモウデッドリフトというデッドリフトのバリエーションになってしまいます。
また逆に、歩幅が狭すぎるとバランスが取りにくくなり、膝を十分に曲げるのが難しくなるため、今度は膝をほぼ伸ばした状態でおこなうルーマニアンデッドリフトになってしまう。
この場合は、本来、通常のデッドリフトで主に鍛えらえる大臀筋や脊柱起立筋の関与が減り、太ももの大腿四頭筋にいたってはほぼ関与しなくなるため、ほとんど太もも裏のハムストリングをメインに鍛える筋トレ種目といっていいような筋トレになってしまいます。
この間違ったフォームへの対策方法
もちろん、わざとスモウデッドリフトやルーマニアンデッドリフトをおこなうならまだしも、それが無意識だとしたら、すぐに本来の正しいデッドリフトのやり方に修正していきましょう。
通常のデッドリフトの場合、人によって多少の差異はあるものの、基本的には両足の幅は腰幅程度にするのがベスト。
また自分にとって最適な足幅をみつけるために、次の方法をおこなってみると、自然と最適な位置が確認できるので試してみましょう。
- 静止した状態から立ち上がる
- できるだけ高く上に飛んでみる
- 自然に着地する
ジャンプから着地した際の両足の位置こそが、デッドリフトをする際の最適な両足の位置になります。
デッドリフトのフォーム間違い⑧:グリップ幅が広すぎる
デッドリフトでサブ的に鍛えられる筋肉のひとつとして、背中の筋肉の中では最も大きくて有名な広背筋があります。
そして、デッドリフトの醍醐味のひとつが、下半身の筋肉だけでなく上半身背面の大きな筋肉までを鍛えられるという点。
しかし、あまりにも広すぎる手幅のフォームでデッドリフトをおこなうと、この広背筋に効かせることが難しくなってしまい、さらにデッドリフトの動きもぎこちなくなってしまいます。
この間違ったフォームへの対策方法
デッドリフトで背中の背面を効果的に鍛えていくためにも、バーベルを握る際の手幅もしっかりと確認しておきましょう。
デッドリフトでベストな手幅を探るには、自然と腕を下にぶら下げた状態にすると、両手の幅は腰幅とほぼ同じぐらいになり、多くの人にとってはこれが最もベストな手幅。
それでも人によっては、多少調整が必要になることもあるので、その場合は、両手を腰幅と同じにした状態でグリップを握り、少しずつ外側へ移動していき、自分にとって一番しっくりとくる手幅をみつけていきましょう。
基本的には、グリップの幅が腰幅に近ければ近いほど、真っ直ぐと手が伸びた状態でバーベルを体に近づけやすく、コントロールがしやすくなります。
デッドリフトのフォーム間違い⑨:シューズが不適切
デッドリフトのやり方においては、ただフォームを確認するだけではなく、利用するシューズに関してもチェックしておきましょう。
特にデッドリフトの初心者にありがちなこととして、利用するシューズを気にせず、デッドリフトに適さない靴を履いておこなっているなんて場合がたまりあります。
例えば、圧縮性が高く、靴底の厚いランニング用のシューズ。
ランニング用のシューズは、長時間の間ステップを繰り返していくランニングやジョギングにおいては、足関節や膝関節への負担を減らすために効果的。
しかし、デッドリフトの場合、重い重量を体前面にぶら下げながらバランスを取る必要が出てくるため、厚底のランニングシューズだと不安定になりやすく、デッドリフトのパフォーマンスを阻害してしまうなんてことになってしまうかも。
この間違ったフォームへの対策方法
今までランニング用のシューズを利用してデッドリフトをおこなっているなんて場合は、シューズを変えるか、そのシューズを脱いで裸足でおこなってみましょう。
デッドリフトに向いたシューズを選ぶのなら、エアソールが無くて靴底が硬く、薄めのものがおすすめ。
シューズを変えたり、裸足になるだけで、さらに重いウエイトを挙上していけるようになります。
デッドリフトのフォーム徹底解説!よくある9つの間違いとその対策法とは?まとめ
デッドリフトのフォームに関して、よくある間違いを対策方法とともに紹介してきました。
デッドリフトはとても効果のある筋トレ種目。
だからこそ、効果が出る正しい方法でおこなっていき、効率よく成果を出せるようにしましょう!